石器時代のロープや糸を作る「見えない技術」を考古学者が復元
2015年、テュービンゲン大学のニコラス・コナード氏らはドイツ南部のホーレ・フェルス洞窟から、マンモスの牙で作られた棒の破片を発見しました。破片から復元された棒は長さ20.4cmで、4つの穴の内側にらせん状の溝が刻まれています。
コナード氏らは、この棒がロープ作りの道具なのではないかと考え、棒を複製して再現実験を行いました。研究チームによると、ガマという植物の葉を複数の束に分け、それぞれをねじりながら棒の別々の穴に通すと、溝で繊維の向きがそろって束のねじれが保たれ、束に沿って棒を動かすことで束同士がより合わさって1本のロープになったとのこと。研究チームは束をねじる人と棒を動かす人で作業を分担し、4~5人で10分間に約5mの丈夫なロープを作ることができたそうです。
石器に残る傷なども当時を知る手掛かりになります。リエージュ大学の考古学者であるVeerle Rots氏は、フランスやオランダの約25万年前の石器に、ひもなどで柄に固定したとみられる使用痕を発見しました。とがった石は木の柄に固定すればやりになり、石の刃も直接握るより木の柄に固定した方が力を込めて使えます。Rots氏は、この技術が石器の使い方を大きく変えたと指摘しています。
また、ひもやロープは袋や網、わなにも使えます。スペインの岩絵を調べた研究チームは、ロープのはしごを登って蜂蜜を採る人が描かれていると報告しています。
現代の伝統的な暮らしを記録した民族誌資料からも、ひもの用途や製造の手間が分かります。考古学者のカレン・ハーディ氏は、パプアニューギニアのウォラ族の資料を分析し、約200種類の道具や装飾品などの約95%にひもや繊維、つるが使われていると報告しました。同氏によると、袋1つに使うひもを作るには繊維をねじるだけで65~80時間かかり、材料を集め、繊維を取り出して乾かす作業にも約14時間必要とのこと。
アメリカのケニオン大学の古人類学者であるブルース・ハーディ氏によると、ひもを作りためる作業が狩猟採集民の日々の暮らしや移動の時期に影響していたとのことで、必要な量のひもを作りためるまでは次の場所への移動を待つ必要があり、ロープ作りや皮のなめし、木の加工には材料を集める時期を見越した準備や長時間の作業、仲間同士での相談が必要だったそうです。
さらに、植物を使う技術の痕跡は木製の道具からも読み取れます。ドイツのシェーニンゲン遺跡では、水に浸かった酸素の少ない環境で木製のやりが保存されていました。解体の痕が残る馬の骨も出土し、この遺跡の木製道具を調べた研究チームは、約30万年前の人々が木製のやりを使って動物を狩っていたとみています。
コナード氏は「『石器時代』と呼ばれるのは見つかるものが石ばかりだからです。しかし、当時の人々が石しか使っていなかったわけではありません」と述べています。
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