テロは「最後の引き金」 条約履行停止、根底に不公平感―元インド政府代表
インダス川水利条約に基づくインド政府代表を務めたプラディープ・サクセナ氏(本人提供・時事)
【ニューデリー時事】インダス川水利条約に基づくインド政府代表を2022年まで歴代最長の約6年務めたプラディープ・サクセナ氏がインタビューに応じた。同国が条約の履行停止に踏み切った根底には「不公平さ」や地域開発を阻んでいることへの長年の不満があり、昨年4月のテロは「最後の引き金」だったと主張した。書面やオンラインによる主なやりとりは次の通り。
―条約が当初から不公平だと主張している。
インドは条約の下、インダス川水系の総流量の5分の1しか利用できない。また、パキスタンの水路建設の資金として、インドは(世界銀行を通じ)現在の価値で約25億ドル(約3900億円)支払った。世銀が関与したことで問題が複雑になった。
―過去にも履行停止を検討したことは。
すべての文書に目を通していないのでコメントできない。ただ、前文にある「善意と友好の精神」がもはや失われているとの認識は高まっていた。パキスタンは北部ジャム・カシミール州(最上流域にあるパキスタンとの係争地)開発に対する大きな障害となり、インドの国益を損なう形で条約が悪用されているとの確信も政府内で強まっていた。テロは決定打にすぎない。
―履行停止による影響は。
インドはもはや同州の開発を妨げていた制約に縛られていない。(パキスタンに割り当てられている支流)チェナブ川で水力発電所建設を迅速に進めているほか、貯水池の底にたまった泥の除去や貯水容量の最適化を開始した。電力不足を解消し、余剰電力を生み出せる地域へと転換する目的だ。
―パキスタンがインドによる「水の兵器化」を訴える一方、インドは国際河川ブラマプトラ(ヤルツァンポ)川に関し、上流の中国に対し同様の主張をしている。
印中間にはインダス川条約に匹敵する包括的で拘束力のある取り決めは存在しない。二つの状況は本質的に異なる。インドは定期的なデータ共有などを一貫して求めてきたが、中国は上流の建設活動の詳細を共有しない。ただ、印パ間のような行き詰まりには達していない。
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