生後しばらく母乳のみで育てられた子どもはADHDの症状が軽減される可能性
そこでノルウェーのベルゲン大学で客員研究員を務めるベリット・スクレッティング・ソルバーグ氏が率いるチームは、ノルウェー人家族を子どもの妊娠から幼少期にかけて追跡したデータを分析しました。最初の分析対象となったのは1999~2009年に生まれた3万7643人の子どもで、生後6カ月の時点で母親が母乳育児に関するアンケートに回答しました。なお、ここでの完全母乳育児は粉ミルクや固形食を一切与えず、母乳のみを与えることと定義されていました。
その後、子どもが3歳・5歳・8歳になった時点で、両親は子どもの多動性・衝動性・不注意といったADHDに関連する症状について評価しました。さらに、子どもたちの遺伝子プロファイルをマッピングして、ADHDの遺伝的リスクスコアも算出して考慮に入れたとのこと。分析の結果、完全母乳育児の期間が1カ月長くなるほど、3つの年齢すべてにおいてADHD症状が減少することが確認されました。
続いて研究チームは、1万8349組の親子からなるグループを対象に、母乳育児と小児期のADHD症状の関連性について調査しました。分析ではADHDに関連する両親の遺伝的リスクスコアや子どもの遺伝子データ、母親の学歴、出産時の両親の年齢、子どもの出生体重、子どもが出生した季節、社会経済的要因などを考慮して統計モデルを調整したとのこと。
その結果、やはり「母乳のみでより長い期間育てられた乳児は、小児期のADHD症状が少ない」という一貫した傾向がみられました。完全母乳育児の期間が短いことや、母乳以外も赤ちゃんに与える育児方法は、一貫してより多くのADHD症状と関連していたと報告されています。
さらに、兄弟姉妹の間で完全母乳育児を行った期間が異なる5000組以上の兄弟姉妹に着目して分析したところ、やはり母乳育児で育てられた期間が長いほど、ADHDの症状が少なくなることが確認されました。この結果はたとえ遺伝的・社会経済的・環境的な要因に違いがなくても、母乳や授乳行為そのものが、子どもの行動発達に生物学的・心理学的な影響を及ぼす可能性を示唆しています。
なお、データからは完全母乳育児の潜在的な利点が示唆されたものの、観察されたADHD症状の軽減は個人レベルで見ると軽微なものでした。そのため研究チームは、特定の子どもにおいて完全母乳育児が臨床的に大きな変化をもたらすとは限らないと指摘しています。
今後の研究では、母乳育児が発達中の子どもの脳に影響する生物学的メカニズムの解明が求められています。このメカニズムには母乳に含まれている栄養素が関連している可能性や、授乳の際に生じる皮膚と皮膚の物理的接触などが関連している可能性があるとのことです。
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