歩くのと同じくらいゆっくりなランニングでも気分が良くなって認知機能が向上する
そこで研究チームは、平均年齢22歳の健康な男女24人の持久力を測定し、被験者ごとに「超低強度運動」に相当するランニング速度を算出。それぞれ日を分けて、トレッドミルを用いた「10分間の超低強度ランニング」をするか、安静な状態で10分間座るかを指示しました。
超低強度ランニングにおける走行速度は時速約3~6kmで、通常の歩行とほとんど変わらない速度でした。また、ランニング中の平均心拍数は1分間あたり104~107拍の範囲内であり、多くの人が無理なくできる範囲内の運動強度だったとのこと。
被験者は10分間のランニングまたは安静座位の前後に、複雑な課題を遂行する実行機能を測定するテストを行い、気分の快適度や覚醒度を測定するアンケートに回答しました。また、テスト中の前頭前野の活動も、血流から脳活動を測定するfMRIで計測されました。
データを分析したところ、スローランニングを行った後はじっと座っていた後と比較して、実行機能が有意に向上していることが判明。実行機能に関わる左前頭前野の特定領域の活動も、スローランニングを行った後の方が活性化していることが確認されました。
また、スローランニングを行った後は座った後と比較して、覚醒度や気分が著しく向上していることもわかりました。以下のグラフは、縦軸がスローランニングまたは安静座位の前後で覚醒度の変化を表したもので、左が安静に座った時の変化を、右がスローランニングをした時の変化を示しています。スローランニングをした後は、明らかに覚醒度が高まっているのが見て取れます。
以下は縦軸がスローランニングまたは安静座位の前後で快適度の変化を比較したもの。左の安静座位より右のスローランニングの方が、明らかに快適度が増しています。
さらに今回の研究では、スローランニング後の快適度向上が「スローランニング中の頭の加速度」と相関関係にあることも示されました。この結果は、ランニングに特有のリズミカルな頭部の上下運動が、何らかの形で気分の改善に寄与していることを示唆しています。
研究チームは「本研究により、歩行に近いごくゆっくりとした速度のスローランニングであっても、快適気分と実行機能が向上すること、その際にそれらを担う左前頭前野亜領域が活性化することが明らかになりました。これは、脳活動を心地よい方向へ変化させる運動戦略としてのスローランニングの有用性を示すものです」とコメント。今後は他の運動形態とスローランニングを比較しつつ、スローランニングのどのような特性がこうした有益な効果をもたらすのかを検討していくとのことです。
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